02:仮面ライダーになった男


アギト
「ハァ……ハァ……うぅっ……!」

壁に叩きつけられたダメージが残っているのか、再び地に膝を落とすアギト。
その時、アギトは自分が全く別の姿に変わっていることに気づき、驚愕する。

アギト
「え……えっ!? オ、オレ……いったいどうなっちまったんだ……!?」

しかし、そんな彼にテストゥード・オケアヌスが容赦なく襲いかかる。

アギト
「がっ!」

テストゥード・オケアヌスはアギトの首を掴み上げ、そのまま建物の壁に叩きつける。
アギトは壁に叩きつけられながらも、テストゥード・オケアヌスの腹部に蹴りを放ち、
テストゥード・オケアヌスはあまりの威力にふっ飛ばされてしまう。

テストゥード・オケアヌス
「グゥッ!」

アギト
「ハァ……ハァ……(な、何だ……? 力が……溢れていく……?)」

自身の変化に戸惑うアギトだが、今はこの場を切り抜けることが先決だと考え、テストゥード・オケアヌスに目を向ける。
テストゥード・オケアヌスはダメージを受けた腹部を押さえながらも立ち上がり、殺意に満ちた目でアギトを睨みつける。

テストゥード・オケアヌス
「ハァァァァァァ……」

アギト
「(くそっ、殺る気満々じゃねぇか……バイクに乗って逃げようにも、よりによってアイツの後ろにあるし……)」

どう逃げようか考えているうちにテストゥード・オケアヌスが襲いかかり、アギトは覚悟を決めて戦いに挑む。
テストゥード・オケアヌスのパワーは普通の人間とは比べ物にならないほど高いが、アギトはそれ以上だった。
アギトは相手の攻撃をガードしつつ、隙ができたところでパンチやキックを繰り出し、ダメージを蓄積させる。

テストゥード・オケアヌス
「ガッ……!」

テストゥード・オケアヌスは蓄積したダメージに耐え切れず、とうとう倒れてしまう。

アギト
「へ、へへ……何だ、大したことねぇな。よし、今のうちに……!」

テストゥード・オケアヌスが倒れている隙にバイクへと走り出すアギト。しかし、新手の出現によりそれを阻まれてしまう。

???
「ハァァァァァァ……」

アギト
「うわっ!? も、もう1体!?」

テストゥード・テレストリス。
同じトータスロードというだけあって姿形がテストゥード・オケアヌスと酷似しているが、体色が金色という違いがある。

アギト
「こんの……!」

アギトはテストゥード・テレストリスを蹴り飛ばすも、今度はテストゥード・オケアヌスに羽交い絞めにされてしまう。
キリがないと思ったアギトは逃げる前にひとまず相手を黙らせておこうと判断し、何とか振り払って右足に力を籠める。

アギト
「悪いが、しばらく眠ってもらうぜ……! ハァッ!!」

テストゥード・オケアヌスに向けて渾身の一撃を放つアギト。
しかし、当たる直前にテストゥード・オケアヌスが背を向けたことで甲羅にヒット。
背中の甲羅はかなり強固で、大したダメージを与えられずに弾き返されてしまった。

アギト
「なっ!? マジかよ……!?」

驚きを隠せないアギト。2体のトータスロードはそんな彼を嘲笑うかのように、ゆっくりと歩み出す。――――その時だった。

テストゥード・オケアヌス
「グッ!? ガ……ガ……オゴッ……ゴゴゴッ……!!」

テストゥード・テレストリス
「!?」

アギト
「な、何だ……?」

突如、テストゥード・オケアヌスが苦しみ出した。
アギトの渾身の一撃を強固な甲羅でガードしたとはいえ、全く効いていないわけではなかった。
それに加え、テストゥード・オケアヌスはあの一撃を喰らう前からすでに体力を消耗していた。
その結果、テストゥード・オケアヌスの身体は限界に達してしまい、爆発を起こして消滅した。

アギト
「……や、やったのか……?」

テストゥード・テレストリス
「ハァァァァァァ……フッ!」

テストゥード・テレストリスは地面を液状化し、地中に潜ってその場を逃げていった。
後に残されたのはアギトだけとなり、いつの間にか変身が解けて元の姿に戻っていた。

火神正一
「ハァ……ハァ……アイツら、いったい何だったんだ……? それに、さっきまでのオレ……何であんな姿になったんだ……?」

しかし、いくら考えても答えが出るはずもなかった。正一はとりあえずバイクに乗り、その場から離れることにした。

 

 

 

 

 

東京。
晴人は藁居美奈子の姉の警護をしていた。藁居家の家族は、殺された美奈子を除いても7人という大家族。
晴人たち魔法使いが総動員しても護り切れないその人数に頭を抱え……てはおらず、実は簡単に解決した。
一連の犯行は全て1人ずつ殺されており、そしてそれは標的が1人で外出している時だけに限られている。
つまり、1人だけ外出させて残りを1ヶ所に固めれば全員の警護ができ、尚且つ犯人を誘き寄せれるのだ。
しかし、それは1人を囮にすることを意味する。そんな危険なことを一般人にやらせるわけにはいかない。
そこで晴人は、藁居家の協力を得ながら、ある作戦を実行している。あとは犯人が現れるのを待つだけだ。

操真晴人
「(さぁ……出てこい)」

晴人は犯人に気づかれないよう、少し離れた所で見守っている。そして、美奈子の姉が公園で1人佇んでいた、その時だった。

???
「グルルルルルル……」

公園の茂みから何者かが現れた。人間ともファントムとも異なる、見たことのない怪人であることに晴人は驚いた。
首に巻いた赤いマフラー、そして黄金色の豹に似た姿をしたその怪人は、ジャガーロードのパンテラス・ルテウス。
彼は右手の甲に左手で何らかのサインを切るような仕草をし、そして美奈子の姉に近づいていく。

美奈子の姉
「あ……!」

美奈子の姉もパンテラス・ルテウスに気づき、その姿を見て思わず声が出てしまう。……が、それだけだった。
彼女は悲鳴を上げることも逃げることもなく、睨みつけるようにじっとパンテラス・ルテウスを見据えていた。
パンテラス・ルテウスはその様子に違和感を覚えつつも彼女を殺そうとするが、直後に不思議なことが起きた。

メイジドライバー
《チェイン、ナウ》

パンテラス・ルテウス
「!?」

美奈子の姉は『チェイン』の指輪を右手にはめ、ベルトにある手のマークをあしらったバックルにかざした。
すると、白い鎖がパンテラス・ルテウスを拘束し、身動きを取れなくした。

操真晴人
「作戦成功。よくやった、真由ちゃん」

美奈子の姉?
「晴人さんの魔法のおかげです」

作戦が上手くいったことを確認した晴人は姿を現し、美奈子の姉のフリをした人物を「真由ちゃん」と呼んだ。
実は彼女の正体は稲森真由であり、晴人の『ドレスアップ』の魔法で美奈子の姉の普段着に着替えていたのだ。

操真晴人
「残念だったな、怪人さん。本物の美奈子ちゃんは家で大人しくしてもらってる。もちろん護衛付きでな」

パンテラス・ルテウス
「……!」

稲森真由
「さぁ、終わりの時よ!」

ウィザードライバー
《ドライバーオン・プリーズ》

メイジドライバー
《ドライバーオン・ナウ》

2人はベルトを召喚し、ベルトの中央にあるハンドオーサーを左向きに切り替える。

ウィザードライバー、メイジドライバー
《《シャバドゥビタッチヘーンシーン! シャバドゥビタッチヘーンシーン! シャバドゥビタッチヘーンシーン!》》

操真晴人
「変身」

稲森真由
「変身……!」

ウィザードライバー
《フレイム・プリーズ。ヒー、ヒー、ヒーヒーヒー!》

メイジドライバー
《チェンジ・ナウ》

左手にはめた指輪をベルトにかざすと魔法陣が現れ、2人の身体を包み込んだ。
魔法陣が身体を通過すると姿が変わり、完全に通過した瞬間に変身が完了する。
晴人は仮面ライダーウィザード、真由は仮面ライダーメイジになったのである。

パンテラス・ルテウス
「……フンッ!」

パンテラス・ルテウスは鎖を破り、戦闘態勢に入る。

ウィザード
「さぁ、ショータイムだ!」

メイジ(真由)
「はああああああ!!」

メイジ(真由)が先陣を切り、それに続く形でウィザードも動き出す。
2人はアクロバティックな蹴り技を駆使して相手を翻弄しながら戦う。
……ここだけ見ると、魔法使いというよりむしろ武術の演武者である。

パンテラス・ルテウス
「グルルルルルル……フッ!」

素早く攻撃してくる2人に対し、パンテラス・ルテウスは時速330キロメートルのスピードを誇る脚力で縦横無尽に駆け回る。
今度は2人が翻弄される形となり、『コネクト』の魔法で引き出したウィザーソードガンで狙撃を試みるが、回避されてしまう。

メイジ(真由)
「速い……!」

ウィザード
「まずは動きを止めないとな……これで行くか!」

ウィザードライバー
《ウォーター・プリーズ。スィ~スィ~スィスィ~!》

ウィザードは左手の指輪を変え、水属性のウォータースタイルに変身した。

ウィザードライバー
《リキッド・プリーズ》

さらに右手の指輪も変え、『リキッド』の魔法を発動する。一見、何も変化がないように思われるが……。

ウィザード
「さぁ……来い!」

パンテラス・ルテウスを挑発するウィザード。
パンテラス・ルテウスは一瞬警戒するが、何も変化が起きないので所詮こけおどしだろうと思い、そのまま攻撃を繰り出す。
ところが、何度攻撃してもすり抜けてしまい、さらには液状化したウィザードに纏わりつかれて関節技を決められてしまう。
先ほどウィザードが使用した『リキッド』は、自らの肉体を液状化させて自由自在に変形することができる魔法なのである。

ウィザード
「今だ! 真由ちゃん!」

メイジ(真由)
「はい!」

メイジ(真由)はウィザーソードガンを構え、パンテラス・ルテウスに銀の弾丸を浴びせる。
パンテラス・ルテウスが弱ったところでウィザードは関節技を解き、トドメを刺そうとする。

パンテラス・ルテウス
「グウウウッ……!」

ウィザード
「フィナーレだ」

ウィザーソードガン
《キャモナ・スラッシュ・シェイクハンズ! ウォーター・スラッシュストライク!》

ウィザードはソードモードに切り替えたウィザーソードガンのハンドオーサーに左手をかざし、刀身に水属性を付加させる。
追い詰められたパンテラス・ルテウスは逃走を図ろうとするが……。

メイジドライバー
《イエス! グラビティ! アンダースタンド?》

パンテラス・ルテウス
「グヌッ!? グ……オオオッ……!」

メイジ(真由)はパンテラス・ルテウスの頭上に重力を操る魔法陣を出現させ、逃げられなくする。

ウィザード
「ナイスアシスト! ハァッ!!」

パンテラス・ルテウス
「グアアアアアア!!!」

水の力を宿した青い衝撃波を喰らい、パンテラス・ルテウスは爆発を起こして消滅した。
ウィザードとメイジ(真由)は変身を解き、一息つく。

操真晴人
「ふぅい」

稲森真由
「やりましたね、晴人さん」

操真晴人
「ああ。さっきのアシスト、なかなか良かったよ」

稲森真由
「いえ、そんな……それにしても、いったい何だったんでしょう、あの怪人……」

操真晴人
「そうだな……見るからにファントムじゃなかったが、結局ヤツの目的は分からずじまいだしな……」

事件の犯人と思しき怪人を倒したものの、未だ謎は残されたままだった。
せめてヤツの目的を聞き出しておくべきだったと後悔する晴人だったが、
言葉が通じる相手とは思えない感じだったからどの道無理かと思い直し、
凛子たちが待機している藁居家に一旦戻ることにした。

操真晴人
「とにかく、凛子ちゃんたちにこのことを報せよう。被害者の家族も安心させないとな」

稲森真由
「そうですね」

そう言って、公園を後にする2人。しかし、彼らは気づいていなかった。
この公園で起きた一部始終を1人の女性が物陰から見ていたことに……。

女性
「ふぅん……あれが指輪の魔法使いか……ウワサ通りの実力だね」

女性はクスリと笑いながらそう呟くと、人間ではあり得ない跳躍力でその場を去っていった……。

 

 

 

 

 

TO BE CONTINUED……



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