01:神【サンダーマスター】


某日 某時刻 マメーリア王国・サンダーパレス

クスアイランドにある2つの神殿、ファイアパレスとサンダーパレス。
2つの神殿にはそれぞれ強大な力を秘めた神器が隠されているという。
そのうちの1つが、変わった笑い方をする2人組に発見されてしまう。

ふるるると笑う科学者
「――――さま! ついに見つけたるる!」

ゲヒャヒャヒャと笑う魔女
「これがサンダーパレスに隠されし三種の神器の1つ、『怒りの矛』か……何て凄まじい魔力なのじゃ……!」

ふるるると笑う科学者
「しかし、まさかこんな辺ぴな島にあるとは思わなかったるるよ……おかげでずいぶん無駄な時間を費やしたるる……」

ゲヒャヒャヒャと笑う魔女
「泣き言を言ってないで、さっさとこれを奪い取ってここからズラかるよ!」

魔女が『怒りの矛』を手にしようとした、その時だった。

ピシャン!!

ゲヒャヒャヒャと笑う魔女
「!?」

魔女と『怒りの矛』の間に雷が落ち、神々しい雰囲気を纏う者が現れた。サンダーパレスの守護神・サンダーマスターである。

サンダーマスター
「侵入者よ……この『怒りの矛』は選ばれし者のみが持つことを許される神器である。
 どうやってここに入り込んできたのか知らぬが……勝手に神器を持ち去ることは許さん」

ゲヒャヒャヒャと笑う魔女
「その口ぶり……もしや、アンタがサンダーマスターなのかい? ゲヒャヒャヒャヒャ!! まさか本当にいたとはねぇ……!」

サンダーマスターを前にしても余裕を崩さない魔女。サンダーマスターはそんな彼女を見て怪訝に思う。

ゲヒャヒャヒャと笑う魔女
「だが、せっかく出てきたところで悪いけど、さっさと退場してもらうよ!」

サンダーマスター
「何……?」

パチンッ

魔女が指を鳴らすと、サンダーマスターの足元にブラックホールのような大穴が出現した。

サンダーマスター
「なっ!?(しまった!)」

ギュオオオオオオ!!

サンダーマスターは急いでその場から離れようとするが、大穴から生じる吸引力は凄まじく、どんどん引っ張られていく。

サンダーマスター
「ぐぐっ……!」

ゲヒャヒャヒャと笑う魔女
「ゲヒャヒャヒャヒャ!! あたしのジャマをするからこうなるんだよ!」

魔女は勝ち誇ったように笑いながら『怒りの矛』を手にした。

ゲヒャヒャヒャと笑う魔女
「ついに……ついに……『怒りの矛』が手に入ったわい!」

ふるるると笑う科学者
「――――さま! 次はファイアパレスへ向かうるる!」

ゲヒャヒャヒャと笑う魔女
「うむ、分かっておる」

その場を後にし、ファイアパレスへと向かう2人。その時、魔女の笑みがより一層邪悪なものに変わる。

ゲヒャヒャヒャと笑う魔女
「(見ておれ、にっくきマリオブラザーズめ……目に物を見せてくれるわ!)」

2人がいなくなり、後に残されたサンダーマスターは『怒りの矛』を奪われてしまったことを悔やむ。

サンダーマスター
「な、何てことだ……!(こうなれば……あの者に委ねるしか――――)」

シュュュュュュン……

サンダーマスターは大穴に吸い込まれ、彼の意識はそこで途切れた。
しばらくすると大穴が消え、サンダーパレスは静寂に包まれた……。

 

 

 

 

 

3月20日 午前11時21分 キノコ王国・マリオの家

キノコタウン付近にある一軒家。そこにはマリオとルイージが住んでいた。

マリオ
「ふぅ……最近疲れが溜まっているせいか、いつもの調子が出ないなぁ……」

溜め息をつきながらそう呟くマリオ。このところ冒険の連続であまり休めておらず、疲労が溜まっているようだ。

ルイージ
「ホントだよねぇ……こういう時はどこかでリフレッシュしたいもんだね」

それはルイージも同様で、マリオほどではないが表情に疲れが浮き出ている。

マリオ
「そうだなぁ。今度、旅行にでも行こうか?」

ルイージ
「旅行かぁ……行くとしたらどこが良いかな……あ、お茶、ここに置いとくよ」

そう言って、ルイージは用意したお茶をマリオの前に置く。

マリオ
「お、サンキュー」

ルイージ
「テレビ見る?」

マリオ
「見る見る」

ルイージ
「それじゃ、ポチッとな」

ルイージはテレビの電源を入れた。画面にはキノピコが映っており、ちょうど何かの中継が始まるところだった。

キノピコ
《中継のキノピコです。キノコタウンで行われる飛行船『プリンセス・ピーチ』の航空パレードが、今まさに始まっています!
 あっ! たった今、『プリンセス・ピーチ』が私たちの頭上を通過していきました!》

マリオ
「ほー、ピーチ姫から話は聞いていたけど、スゴいデカさだなぁ」

やがて中継が終わり、画面がニューススタジオに切り替わる。

アナウンサー
《では、次のニュースです。マメーリア王国領ヘラへラグーンのクラゲマッサージが只今人気沸騰中……ザザッ……》

マリオ
「ん? 何だかテレビの調子が悪いな……」

アナウンサー
《古代クス文明の流れを汲む……ザザッ……の……ザザザッ……パワーが……ザザザッ……を優しく癒し……ザザ――――ッ》

突然テレビの調子が悪くなり、画面が砂嵐のようになってしまう。

ルイージ
「うわっ、とうとう寿命かなぁ……?」

マリオ
「叩けば直るんじゃないかな?」

ルイージ
「そんなことしたら本当に壊れちゃうんじゃあ……」

マリオ
「やってみないと分からないだろう? ……てぇい!」

ガンッ!

マリオはテレビを叩いてみたが、画面は依然として砂嵐のままだった。

ルイージ
「……直らないけど」

マリオ
「う~ん、アンテナがイカれているのかな……? ちょっと屋根に登って見てくるよ」

ルイージ
「気をつけてね~」

マリオはアンテナを確認しに外に出た。中で待っているルイージはテレビを見つめながら考え事をしていた。

ルイージ
「(クラゲマッサージか……前に一度受けてみたけど、あれは気持ち良かったなぁ……)」

その時、砂嵐に混じって声が聞こえてきた。

???
《ザザッ……げし者よ……》

ルイージ
「? 直ったのかな?」

しかし、聞こえてくる声は先ほどのアナウンサーのものではなく、どこかで聞き覚えのあるものだった。

???
《サン……ザザッ……ンドを受け継げし者よ……ザザザッ……こえるか……?》

ルイージ
「!? こ、この声は……!?」

次の瞬間、画面が元に戻り、謎の声も聞こえなくなった。

アナウンサー
《ザザッ……では、次のニュースです》

ルイージ
「あ、あれ……?(今の声はいったい……?)」

マリオ
「直ったかー?」

謎の声に困惑する中、アンテナを確認し終えたマリオが戻ってきた。

ルイージ
「え? あ、うん……直ったよ……」

マリオ
「? どうしたんだい?」

ルイージ
「……ねぇ兄さん、砂嵐から声が聞こえることってあるのかな?」

マリオ
「砂嵐から声……? あぁ、あれだよ。砂嵐はいろんな音の波長が混ざり合っているから、人の声が聞こえることがあるんだよ。
 この前見た科学系の番組でそう言っていたよ」

ルイージ
「へー、そうなんだ……(ボクが聞いた声はそれだったのかな……でも、どこかで聞いたことがある声だったんだよなぁ……)」

マリオ
「あっ! そろそろ『ノコディにおまかせ!』の時間だ! 見ておかないと!」

ルイージ
「兄さんってホントそれ好きだよねぇ」

マリオ
「まぁね。えーと、リモコンリモコン――――」

コンコンッ

その時、玄関のドアをノックする音が聞こえた。

ルイージ
「あれ? お客さんかな?」

ガチャッ

とりあえず応対しようと、ルイージはドアを開ける。

ルイージ
「はい、どちらさま……うっ!」

キュピーン!

ドアを開けた瞬間、眩い光がルイージの視界を覆う。目を開けてみると、そこには無駄に輝くマメ族がいた。

無駄に輝くマメ族
「やぁ。久しぶりだね、緑のセニョール」

ルイージ
「こ、この、目の前が真っ白になるような輝きは……マメック王子!?」

キュピーン!

ルイージが驚いているのを余所に、マメック王子は中に入ってマリオにも挨拶する。……無駄に輝きながら。

マメック王子
「赤のセニョールも元気にしていたかい?」

マリオ
「ま、まぁね……それにしても、相変わらず無駄に輝いているね、マメック王子……」

マメック王子
「突然の来訪に驚かせて申し訳ない。実はキミたちに頼みがあってはるばるやってきたのさ」

マリオ
「……ひょっとして、マメーリア王国で何かあったとか?」

マメック王子
「察しが良いね、マリオくん。まさにその通りさ」

ルイージ
「マメック王子が自らボクたちに頼み込むなんて、いったい何が――――」

その時、ルイージの頭の中から先ほどの声が聞こえてきた。

???
《……ンダーハ……け継げし者よ……》

ルイージ
「(!? この声は……さっきの!?)」

マメック王子
「? どうしたんだい、ルイージくん?」

ルイージの様子がおかしいことに気づいたマメック王子が声をかけるが、ルイージには聞こえていないのか反応がない。

???
《ワレは……雷の化身……雷の奇跡を伝えし者……サンダーマスター……!》

ルイージ
「(サンダーマスター……!? 確かその人って――――)」

マリオ
「……ージ! ルイージ!!」

ルイージ
「ハッ!?」

マリオに大声で呼びかけられて、ルイージはようやく我に返る。

マリオ
「急にどうしたのさ? ひょっとして疲れているのかい?」

ルイージ
「い、いや……そうじゃないけど……」

マリオ
「……? まぁ、それならいいけど、あんまり無理するんじゃないぞ?」

上の空で返事をするルイージにマリオは不思議に思ったが、とりあえず本題に戻ることにした。

マリオ
「マメック王子、ボクたちの力が必要なんだろう? もちろん協力は惜しまないさ!
 本当はゆっくり休みたかったけど、そんなこと言ってる場合じゃなさそうだしね」

ルイージ
「ボ、ボクも協力するよ! 気になることがあるし……」

キュピーン!

マメック王子
「フフフ、2人とも感謝するよ。詳しい話はマメーリア城に着いてからにするとして、2人にはこれを渡そう」

そう言って、マメック王子は『パタパタの羽』をマリオとルイージに渡した。

ルイージ
「……え? もしかして、これで行くの……?」

マメック王子
「今回の任務はトップシークレットだからね。派手に動くワケにはいかないんだ。申し訳ないけど、これで我慢してほしい」

マリオ
「そ、そうなんだ……まぁ、そういうことなら仕方ないか。使わせてもらうよ」

マリオとルイージは『パタパタの羽』を使い、PしっぽマリオとPしっぽルイージに変身した。

Pしっぽマリオ
「よし、準備OKだ!」

キュピーン!

マメック王子
「それでは、行こうか!」

こうして、マリオとルイージはマメック王子と共にマメーリア王国へと向かうのであった。

 

 

 

 

 

TO BE CONTINUED……



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